且つ、日常

ニュースキャスターが早口で、大きく出されたゴシック体の文字を読み上げる。緊急事態宣言の延長、数県の追加。バイト先で皿を洗いながら眺めた。オーナーは、大きくため息をついて、来週から休業だな、と呟いた。ああ、金も尽きるな。こそこそと酒も飲めなくなるな。行きつけのラーメン屋は営業するのだろうか。

1年前の今頃も確かこんなかんじだったっけな。非日常を感じることももう無くなった。まるでフィクションの世界だった非日常はいつの間にか日常となって、それまであったいつも通りはフィクションの世界に行ってしまった。咳をすると冷たい目をしていた人も今やそれほど見かけなくなってきた。2度目の夏を越えたその先は日常か、果たして望んだ非日常なのか。バイト帰りに活気を失った商店街を通り、1本だけ発泡酒を買って帰った。小銭しか残ってない財布をポケットにしまった。この日常を笑える日が来れば。