地下

健康増進法の影響でタバコの吸えなくなったそこは相変わらず薄暗く空気の循環が悪い。バーカウンターでは既に酔いが回りすぎている人がちらほらいて、その人たちを避けるように重い扉に手をかける。力を入れて開けたその先からスモークが少し漏れもっと暗い…

地下

健康増進法の影響でタバコの吸えなくなったそこは相変わらず薄暗く空気の循環が悪い。バーカウンターでは既に酔いが回りすぎている人がちらほらいて、その人たちを避けるように重い扉に手をかける。力を入れて開けたその先からスモークが少し漏れもっと暗い…

帰る

駅から出ると早い時間にもかかわらずあたりはもう真っ暗になっていた。周辺の賑わいを体現したような屋内の光の漏れ、街頭に照らされた狭い道を白い息を吐きながら歩く。前から来た堂々と道のど真ん中を歩く男女2人組に、譲るような形で、しかし少しの抵抗の…

話の1部だけど生きる理由って話題で最近話した とても重苦しい話題に聞こえるけど明るくポップに みんな酔っていたから彼女がいるからとか、ワンピースが完結してないからとか、地方の女を抱きたいからとか、まあでもそんなもんでいいんだよなって 俺は酒を…

ホットコーヒー

「ねえ、聞いてる?」 ぼうっと本を読んでいた僕は、栞を挟んで本を閉じ、彼女の方に視線を向けた。 「すまない、集中していた」 「はあ、もうほんとにいつも本ばっかり」 僕は手元にあるコーヒーを一口のんだ。彼女は続けて言う。 「純文学をわかった気になって、…

今日、ハイスタのツネさんの訃報をSNSで知った。詳細はまだ分からない。急死だった。学生時代自分の生活の一部の音だったバンドのドラマーが死んだ。ライブなんて2回しか見た事がない。最近はシャッフル再生で流れてくる程度でしか聴いていなかったハイスタ…

今年の夏は暑すぎて死にそうだZE☆

なんだか酔っている。暑くて涼しいところで休憩しようと、相場はカフェだと思うが何故だか僕らは古ぼけた居酒屋に来てしまったようだ。夕方の早い時間からやっていて助かった。セミも鳴けないほどあまりにも暑すぎる外界から一転、冷房の効きすぎた店内とビ…

且つ、日常

ニュースキャスターが早口で、大きく出されたゴシック体の文字を読み上げる。緊急事態宣言の延長、数県の追加。バイト先で皿を洗いながら眺めた。オーナーは、大きくため息をついて、来週から休業だな、と呟いた。ああ、金も尽きるな。こそこそと酒も飲めな…

なあ、もしさ、羽が生えたらどこへ行きたい?と、突拍子もなく彼は僕に話しかけてきた。 ひねくれ者の僕は、何を言ってるんだ、羽なんか生えないよ、そんなものありえないだろう、と返した。 彼は、馬鹿だなお前、俺はね、羽が生えたら未来に行きたいよ、と…

二度と見ない

友人と2人で1本の映画を見た。暗い部屋の中、エンドロールが流れるとふわっと香りがした。空いた発泡酒の缶がじとりとこっちを見つめていた。ああ、と香りが記憶の中のものであることに気づいた。エンドロールが終わると、友人が、好きな人出来たんだよね、…

二日酔いの朝

月曜日、14時、けたたましく鳴るアラームのスヌーズ音で起きた。頭がぐらぐらする。昨日の酒がまだ体の中に残っているようだ。カーテンを開ける。日を浴びる機会が極端に減り、日光がうざったくなり再びカーテンを閉める。台所まで行き、換気扇をつける。昨…