二度と見ない

友人と2人で1本の映画を見た。暗い部屋の中、エンドロールが流れるとふわっと香りがした。空いた発泡酒の缶がじとりとこっちを見つめていた。ああ、と香りが記憶の中のものであることに気づいた。エンドロールが終わると、友人が、好きな人出来たんだよね、と柄にもないことを言い出した。僕は気になって誰なのか聞いた。友人が言うなよ、と一言いい名前を出した後に、どうにも両想いらしい、どうかな、いけるかな、と聞いてきた。僕は、大丈夫、お似合いだと思うよ、自信もっていけよ、とだけ伝えた。部屋の明かりをつけ、酒、追加で買いに行こうか、お祝いだし奢るよ、と僕は友人に問いかけた。僕がこの映画を見たのは二度目だった。